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質問
骨粗鬆症に関する検査について教えてください。

 骨は細胞と同じで常に新しいものへと置き換わっています。この一連の流れをリモデリングといい、古い骨を壊すことを骨吸収、新しい骨を作ることを骨形成と呼び、このバランスが崩れることにより骨粗鬆症が発症します。
 診断基準としては、骨密度の低下などがあげられますが、骨密度は原発性骨粗鬆症に加え、各種続発性骨粗鬆症や骨軟化症、原発性および続発性副甲状腺機能亢進症などの疾患でも低下するため鑑別に必要な他の検査項目も測定することが提唱されています。
 骨代謝マーカーは、病態の把握、鑑別診断、治療薬選択、治療効果の評価、治療アドヒアランス※1向上などを目的として使用され、種類としては骨形成マーカーと骨吸収マーカー、骨マトリックス関連マーカーに分類されます。(表1)
 骨代謝マーカーの測定値に影響を与える要因としては日内変動、薬剤、腎機能、骨折などがあり、採尿や採血は早朝空腹時におこなうことが推奨されています。しかし、TRACP-5bやP1NPなどのマーカーは食事や腎機能低下の影響を受けないため、空腹時採血の必要性はなく、高齢者に多い慢性腎臓病を併発の患者にも有用です。
 骨粗鬆症治療薬には骨吸収抑制作用のあるものや骨形成促進作用のあるもの、骨質改善作用のあるものに分類されますが、2019に薬事承認されたロモソズマブは骨形成促進作用と骨吸収抑制作用の二つの作用を併せ持っています。
 これらの治療効果を判定する目的で骨形成促進作用のある薬剤の投与後にはP1NPなどの骨形成マーカーが、骨吸収抑制作用のある薬剤の効果判定にはTRACP-5bなどの骨吸収マーカーがそれぞれ用いられます。
 薬物治療の評価に関しては治療開始から一定期間後に再測定を行い、治療前の値からの変化によって行います。すなわち、同一のマーカーで測定し、変化率(%)=(後値−前値)/前値×100を算出し、その値が個々のマーカーで算出された最小有意変化:MCS(%)を超えるか否かで判定し、超える有意な変化が認められて初めて効果ありと判定できます。ただし、日内変動のあるマーカーでは治療前と同時刻の尿・血液試料で測定する必要があります。
 測定のタイミングとしては、骨吸収マーカー、骨形成マーカーともに治療開始前に1回目を測定し、骨吸収マーカーは治療開始から3〜6カ月のタイミングで、骨形成マーカーは6カ月以内のタイミングでそれぞれ2回目を測定します。また、治療薬を変更した場合は、変更後6カ月以内に測定することが推奨されています。
 
※1治療アドヒアランスとは、患者が治療方法について理解し、積極的に治療に参加すること
 
表1
種類 マーカー 検体 MSC(%)
骨形成マーカー BAP 血清 9.0
P1NP(Total) 血清 14.4
骨吸収マーカー TRACP-5b 血清 12.4
DPD 尿 23.5
uNTX 尿 27.3
sCTX 血清 23.2
uCTX 尿 23.5
骨マトリックス関連マーカー ucOC 血清 32.2
 
〈参考〉
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版(日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団)
骨粗鬆症における骨代謝マーカーの適正ガイドライン2012年版(日本骨粗鬆症学会)
臨床検査のガイドライン(日本臨床検査医学会、2021年)