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秋に注意したい食中毒
   暑い夏が過ぎ、随分と涼しくなりましたが、例年初秋になると食中毒が増え始めます。とくに昨年においては、10月が日本国内での月別食中毒発生件数が最多となっています。今回は秋に増加する食中毒について取り上げます。
 
カンピロバクター
 カンピロバクターは鶏、牛などの家禽や家畜をはじめ、ペットや野生動物など、多くの動物が保菌している細菌で、日本における細菌性食中毒の中では最も多い原因菌となっています。
 最長で一週間の潜伏期間を経て下痢や腹痛、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。感染して数週間後にギラン・バレー症候群と呼ばれる手足や顔面神経の痺れなどの症状が現れることもあります。
 食肉は十分に加熱調理し、調理器具などは使用後洗浄・殺菌を行うことが対策として重要です。とくに、まな板や包丁は食肉専用のものを用意し、熱湯や煮沸による加熱殺菌を行うことをお勧めします。
 
ノロウイルス
 ノロウイルスによる食中毒は秋頃から増え始め、11月から2月にピークを迎えます。
 感染してから2日以内に吐き気や腹痛、下痢などの症状が現れ、2日程度で快癒します。ウイルスに感染した人を介しての食品汚染が原因であることが多く、直接の原因食品は多くのケースで特定できていません。
 一般にウイルスは熱に弱く、中心部が85℃~90℃となって90秒以上の加熱で失活するとされます。二枚貝をはじめとする魚介類を調理する際にはこれを心掛けておくと良いでしょう。
 
アニサキス
 食中毒を引き起こすアニサキス幼虫は、目視では白色の糸のように見える長さ2cmほどの寄生虫で、サンマやサバ、イカなどに寄生しています。アニサキスが寄生している魚介類を生で食べてしまうと、数時間後に激しい腹痛や嘔吐などの症状に見舞われます。アニサキス幼虫はマイナス20℃で24時間以上冷凍、または70℃以上の加熱により死滅します。醤油やわさびでは、食中毒を防ぐことはできません。
 
フグ毒
 毎年9月後半に水揚げされたフグの初競りが行われ、フグの旬は「秋の彼岸から春の彼岸まで」と言われますが、一方で、秋に入ると自分で釣ったフグを自分で調理したことによる食中毒が毎年発生しています。フグ毒テトロドトキシンによる麻痺症状は呼吸困難による死亡例が多く、とくに肝臓は有毒部位として、フグの種を問わずその販売が禁止されています。フグは店で提供された安全なものだけを楽しみましょう。
 
キノコ毒
 同じく旬のキノコ。キノコ狩りを楽しみにしている方もいらっしゃることでしょう。
 市販のキノコと見た目が似ていても、食べてみたら有毒キノコだったということがあります。とくに、シイタケに似ているツキヨタケ、ホンシメジに似ているクサウラベニタケは食中毒の発生が多いキノコです。
 また、全体が赤色のカエンタケは触るだけでも炎症を引き起こします。食用キノコと確実に判断できないものは、採らないようにしましょう。
 




こらぼ2021年秋号より抜粋