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エコバッグ
  エコバッグを清潔に
 令和2年7月1日からのレジ袋有料化に伴い、買い物にエコバッグを利用する人が急増しています。このエコバッグですが、レジ袋と同じ感覚で使用しているためか洗濯せずに使い続ける人も多く、衛生面で問題になっています。
 日頃からさまざまな物に触れる人の手には多くの微生物が付着しており、その手で触れたエコバッグにも菌は付着しています。また、野菜などの食品にも微生物は付着しており、エコバッグを洗濯せずに使い続けることは衛生的に問題があります。
 農林水産省のホームページではエコバッグを清潔に保つことが推奨されており、定期的に洗濯すること、また肉や野菜、魚などの汁が出やすい食品はビニール袋に入れてからエコバッグに入れるなど、エコバッグを清潔に保つためのポイントが分かりやすく説明されています。
 
微生物による一次汚染と二次汚染
 人や動物だけでなく自然界には土壌、水、空中のいたる所に微生物が存在しており、食品の原料である家畜や魚介類、果実、野菜などの表面には固有の微生物叢(ミクロフローラ)※1が形成されています。また、食品の製造や調理過程の環境にも多くの細菌が存在しており、主にバチルスなどのグラム陽性桿菌、ミクロコッカス※2、スタフィロコッカス※3、ストレプトコッカス※4などのグラム陽性球菌、カビ、酵母などが検出されます。
 このような環境微生物による食品の汚染は、大きく2つに区分されています。原材料由来の微生物による汚染を一次汚染といい、また製造加工工程や調理作業中の環境微生物による汚染を二次汚染といいます。
 
一次汚染
 食品や調理器具には環境中の微生物が直接または間接的に付着して生存していますので、貯蔵温度や水分活性による微生物制御の管理を怠ると有害な微生物が増殖し、食の安全性や保存性、衛生的品質に重大な支障をきたすことにも繋がります。
 
二次汚染
 微生物の汚染源は場所(施設、設備、機器)や物(原材料、製品)、人(手指や衣服)の3つであり、これらの汚染源を対象とした汚染防止策を実施し、環境微生物検査で清浄度を把握してその対策と効果を判定することで、微生物を管理していきます。「非菌三原則」である「菌を持ち込まない」「菌を拡散させない」「菌を増殖させない」が基本となります。
 
環境微生物検査
 環境中の微生物を測定し汚染の実態を把握することによって、汚染源や汚染経路を究明して微生物汚染対策を立案、実行し、その効果を判定することで、製造環境の悪化を事前予測したり日常の衛生管理に役立てたりすることができます。
 環境微生物の測定は、空気中を漂っている空中浮遊微生物には落下菌法や衝突法、食材や器具に付着している表面付着微生物には拭き取り法やスタンプ法というように、目的と対象に合った測定法を選択します。
 環境微生物検査は食品事業者などの微生物制御対策として行われることが多いですが、どういった食材や場所に微生物が多く存在し汚染源となり得るかを把握し、適切な器具の取り扱いや食材の温度管理対策を取るという考え方は、私たちが日常生活で食中毒を回避する上でも十分に役立つものです。
 エコバッグに限らず、人の手や食材が触れる物には必然的に微生物が付着しているということを意識して食材や器具を取り扱うことが大切です。
 
 ※1:微生物の特性の場における種やその数、分布の総体。
 ※2:土壌や水系に広く分布し、食品腐敗の原因となる菌種が多い。
 ※3:ヒトの皮膚や鼻咽腔、消化管等の常在菌。多くは非病原性だが黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐敗ブドウ球菌は病原性を持つ。
 ※4:ヒトの口内に多く存在する。

 
【参考文献】
・食品微生物検査マニュアル(改訂第2版)栄研化学株式会社
・農林水産省ウェブページ「賢く楽しくお買い物!~エコバッグでも食中毒予防~」



こらぼ2020年秋号より抜粋