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食物アレルゲン
  食物アレルギー
 小さなお子さんがいる人は、食物アレルギーに悩んでいる人も多いのではないでしょうか? 学校給食に含まれていたアレルギー物質が原因となってアナフィラキシーショック(全身性のショック症状)が起こり、児童が死亡するというような痛ましい事故が報道されることもあります。食物アレルギー疾患がある人の食品の安全性確保のために、国による食品アレルギーの原因物質の定期的な調査が行われ、アレルギー物質の食品表示の取り組みが進められています。
 
食物アレルギー疾患について
 食物アレルギーは、自分以外の異物を排除しようとする免疫の働きによって引き起こされます。通常、胃や腸で消化・吸収された食物抗原は、免疫学的寛容と呼ばれる仕組みのために異物とは認識されません。しかしながら、食物アレルギーの子どもたちは免疫学的寛容が成立していないために、アレルギー反応が引き起こされると考えられています。乳児期には5~10%の子供が何らかの食物アレルギーを持つといわれていますが、その9割は小学校入学までには自然に治ります。しかし、成人になっても食物アレルギーを持つ人も多くいます。食物アレルギーにより引き起こされる主な症状は、表1のように分類されます。新しいタイプの疾患として近年報告が増えている口腔アレルギー症候群は、幼児・学童・成人(とくに成人女性に多い)に見られ、果物(キウイ、メロン、モモ、パイナップル、リンゴなど)や野菜が原因となり、花粉症との関連が考えられています。
 
アレルギー表示
 
アレルギー疾患の方が安心して生活する社会の構築を目指して、平成27年にはアレルギー疾患対策基本法が施行され、食品表示法では容器包装された加工食品等には特定の原材料を使用した旨の表示が義務付けられています。表示を義務化された「特定原材料」の7品目と表示を奨励されている「特定原材料に準ずるもの」の20品目を表2に、健康被害の調査による食品別の食物アレルギーの原因物質を図1に示します。外食や対面販売食品などにはアレルギー物質の表示が義務付けられていないことから、自主的な情報提供の在り方が検討されています。
 
食物アレルゲン検査とは
 食物アレルゲン検査は、食品にアレルギー物質(アレルゲン)が含まれていないことを確認するための検査です。
 検査では、対象となる食材特有のたんぱく質を抗原抗体反応で検出するELISA法やイムノクロマト法、対象の食材由来のDNAを増幅して検出するPCR法などを用います。原材料としてアレルゲンを含む食品を使用していなくても、製造工程で混入する場合もあります。表示にないアレルギー物質が食品に含まれることは、食物アレルギーを持つ人にとって大きな脅威となることから、食品製造業者は食品の特定原材料表示に十分に注意する必要があります。
 
表1.食物アレルギーにより引き起こされる症状
1.皮膚粘膜症状
 ●皮膚症状︓掻痒感、じんましん、血管運動性浮腫、発赤疹、湿疹
 ●結膜症状︓眼結膜充血、掻痒感、流涙、眼瞼浮腫
2.消化器症状
 ●悪心・疝痛発作・嘔吐・下痢
 ●慢性の下痢による蛋白漏出・体重増加不良
3.上気道症状
 ●口腔粘膜や咽頭の掻痒感・違和感・腫脹
 ●咽頭喉頭浮腫
 ●くしゃみ・鼻水・鼻閉
4.下気道症状
 ●咳嗽(がいそう)・喘鳴・呼吸困難
5.全身性反応
 ●ショック症状(頻脈・血圧低下・活動性低下・意識障害など)
 
 
図1. 食物アレルギーの原因物質
表2.特定原材料と特定原材料に準ずるもの
  特定原材料などの名称 理 由 表示の義務
府令 卵、乳、小麦、落花生、そば、えび・かに とくに発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高いもの。 表示義務
通知 いくら、キウイフルーツ、くるみ、大豆、カシューナッツ、バナナ、やまいも、もも、りんご、さば、ごま、さけ、
いか、鶏肉、ゼラチン、豚肉、オレンジ、牛肉、あわび、
まつたけ
症例数や重篤な症状を呈する者の数が継続して相当数みられるが、特定原材料に比べると少ないもの。 特定原材料とするか否かについては、今後、引き続き調査を行うことが必要。 表示を奨励
(任意表示)
※特定原材料などの名称は、平成26-27年全国実態調査における発症数の多い順に記載しています。


こらぼ2019年春号より抜粋