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残留農薬
 一般的に農薬を使わずに生産された野菜や果物は、安全・安心な食品だと思われています。逆に言うと、農薬について危険性を感じる人が多いということです。そこで、今回は「残留農薬」についてご紹介します。
 
農薬取締法
 農薬とは農薬取締法により次のように定義されています。
  1.病害虫の防除に用いる薬剤(殺虫剤・殺菌剤・除草剤など)
  2.成長調整の薬剤(発根促進剤・着果促進剤・無種子果剤など)
  3.病害虫防除に利用する天敵(アブラムシを食べるテントウムシなど)
 日本国内での農薬の製造や輸入、販売、使用については、農薬取締法に基づき登録されたもののみが可能になっています。登録に際して「使用できる作物」や「使用できる時期」、「使用してよい量」、「使用する回数」などの使用基準が決められており、それに従って使用すれば安全と判断されます。
 
残留農薬について
 農薬の食品への残留については、食品衛生法によって残留基準が設定されています。
 平成14年に中国産の冷凍ほうれん草から基準値を超える農薬が検出された報道により、農薬成分による農作物や土壌、水などの環境汚染に対する関心が高まりました。平成15年に食品衛生法が改定され、平成18年5月より食品中に残留する農薬について、一定の量を超えて農薬等が残留する食品の販売等を原則禁止するという新しい制度であるポジティブリスト制度が施行されました。
 以前のネガティブリスト制度では、指定された農薬についてのみリスト化し、そこに記載された農薬だけに残留基準が設定されていました。そのため、リストに記載されず残留基準が定められていない農薬は規制の対象から外れ、農薬の残留が検出されてもその食品の販売等を禁止するなどの措置を行うことができませんでした。
 ポジティブリスト制度では、原則としてすべての農薬等について残留基準(一律基準を含む)が設定され、基準を超えて食品に残留する場合、その食品の販売等を禁止することができます。 残留基準が定められていない農薬等については、食品衛生法に基づき「ヒトの健康を損なうおそれのない量」を「一律基準」とし、この一律基準を超えて農薬等が残留する食品は販売等が禁止されることになっています。
 一律基準はこれまで国際的な評価機関のデータや国内ですでに評価されている農薬等のデータと国民の食品摂取量に基づき、0.01ppm(食品1kgあたり農薬等が0.01mg含まれる濃度)と設定されました。
 危険性ばかりが取り沙汰されていますが、農薬を全く使用しなかった場合、害虫や病気等の影響で収穫量が不安定になったり、生産者の労働負担が増加したりするデメリットもあります。
 前述のように残留農薬には使用基準があり、それに従って正しく使用されれば安全だと考えられています。農薬や野菜の種類によって違いますが、水洗いや皮むき、調理工程である程度の残留農薬を減らすこともできます。
 あまり神経質にならずに農薬に対しての正しい知識や情報を得ることで、安全な食生活を送ることができると思います。



こらぼ2016年春号より抜粋