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ノロウイルス
ノロウイルスの食中毒
 厚生労働省の統計によると、2014年にわが国で発生した食中毒は、事件数976件、患者数1万9355人にのぼりました。そのうち患者数の90%以上にあたる1万7917人から微生物を原因とした健康被害が出ています。
 食中毒は食品の変質や食品中の有害物質によって起きることもありますが、ほとんどは環境中に生息する微生物に食品が汚染されることによって起きます。とくに12〜3月の冬季に集中して発生するノロウイルスは、食中毒の原因ウイルスです。ノロウイルスに汚染された食品を食べてから、1〜2日で吐き気やおう吐、腹痛、下痢、軽度の発熱などが起こります。症状は成人では軽いですが、免疫力の弱い乳幼児や高齢者では、重症化することがあります。
 ノロウイルスの食中毒の原因として、カキなどの二枚貝からの感染が知られていますが、患者の吐しゃ物や糞便を通しての二次感染も原因となります。
 食中毒の予防には「付けない、増やさない、やっつける」の3原則がありますが、腸管出血性大腸菌O157、サルモネラ、カンピロバクターなどの食中毒菌やノロウイルスは少量でも食中毒を起こすので、「増やさない」対策だけでは不十分です。また、食品の種類・形態あるいは目的によっては微生物が死滅する高温での加熱「やっつける」対策ができないものもあります。
 そこで食品を汚染させないために「付けない」対策が重要になります。
 
便検査
 人によっては、感染しても発症せずに(不顕性感染)ノロウイルスを便から排出し続けている場合があります。その場合、ウイルスは目に見えるものではないため、知らず知らずに食品を汚染し、集団食中毒に発展してしまうことにもなります。そのため、食品取扱い従事者の定期的な検便検査は必要で、大量調理施設衛生管理マニュアルでは、「定期的な健康診断及び月1回以上の検便を受けること。検便検査には、腸管出血性大腸菌の検査を含めること。また必要に応じ10月から3月にはノロウイルスの検査を含めること」としています。
 さらに、不顕性感染の可能性を考慮し、その生活環境においてノロウイルスに感染しないような自覚を持つことが大切です。
 
ノロウイルスふきとり検査
 食品取扱い従事者の徹底した安全管理に向け、検便検査に加えて施設内のノロウイルスふきとり検査も重要となってきます。
 ふきとり場所の例としては、厨房内のまな板や包丁などの調理器具類、冷蔵庫やトイレなどの取手、洗面所や厨房、トイレなどの蛇口、調理者の手や指などです。
 ノロウイルスは感染力が大変強く、少量(10〜100個)でも体内に侵入すると爆発的に増殖します。また、熱や酸、消毒用アルコールにも強く、不活化には85℃で1分以上の加熱、高濃度の次亜塩酸ナトリウムによる消毒が必要です。そのため、施設内のふきとり検査も定期的に行うようにしましょう。
 


こらぼ2016年冬号より抜粋