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食品の腐敗について
 夏になると気温と湿度が上昇し食品が腐敗しやすくなります。腐敗は腐敗細菌や真菌、酵母などの微生物によって有機物が分解され起こるものです。ただし、この分解によって発生するものが人間にとって都合の良い場合は発酵と呼び、区別しています。

 食品は動物性食品と植物性食品に分けられますが、前者はタンパク質やアミノ酸などの窒素化合物が大部分を占め、後者は炭水化物が主成分になっています。したがって、両者が腐敗において発生する物質は異なるものとなります。

 動物性食品が腐敗により分解されると、インドールやケトン等の腐敗アミン、アンモニア、硫化水素などが生成分解されます。特にアンモニアに関しては、微生物のほとんどがアミノ酸分解経路を有し、アンモニアを発生させることから、タンパク質を多く含む食品についてはアンモニア量を腐敗の指標とする場合が多いようです。

 一方、植物性食品については炭水化物の分解により生成される糖やアミノ酸が更に分解して生じたギ酸、酪酸、酢酸など各種の有機酸、また、酵母等により産生されるエタノールなどのアルコール類が腐敗によって生じます。

 エタノールに関しては、その一部を酵母が資化することで酢酸エチルが生成され、接着剤やシンナーのような臭いがするようになることがあります。アルコール製剤使用包装や工場用殺菌剤にエタノールを使用している場合も、異臭には注意が必要です。

 腐敗は微生物によって発生するものですから、微生物が生存しにくい環境を作ることで阻止することができます。温度を適度に調節して保存したり、燻製にして微生物が利用できる水分を減らす等の方法が考えられます。

 生態系にとっては腐敗は有機物を無機物に還元する非常に重要なプロセスです。したがって、自然に起こるものですから、保存方法等を工夫して上手に付き合っていきたいものです。




こらぼ2010年夏号より抜粋