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海水浴場の水質判定基準

 梅雨が明けるといよいよ夏本番。夏の楽しみはいろいろありますが、海水浴を楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。今回は海水浴場の水質についてご紹介します。

海水浴の歴史
 「海水浴」の中の「浴(する)」という字ですが、「水やお湯、日光を浴びる」という意味の他に、「よいものとして身に受ける」という意味があります。確かに「浴」という字がつくものの中には、海水浴や日光浴、森林浴、岩盤浴など体と心にプラスに作用するものばかりです。

 元来、海水浴は現在のように行楽としてではなく、医療目的で行われるものでした。イギリスでは産業革命による大気汚染などから健康への関心が広まり、18世紀半ばから海水浴場が開設され始めました。日本は明治時代、西洋医学を学んだ医師たちにより、医療行為としての海水浴が導入されました。健康維持と回復を目的とした医療行為だったため、医師に処方されて出かけるといったものでした。

 その後、海水浴場発祥の地とされる神奈川県大磯町照ヶ崎海岸が明治18年(1885年)に開設され、鉄道の開通の影響も受けて行楽化していったといわれています。実際には、第二次世界大戦後、水着の種類が増えてから、行楽として注目を浴びるようになったので、海水浴の歴史はそう古くはありません。

 海水中に含まれるミネラル分が皮膚から浸透することによって、新陳代謝の促進、自律神経の調整、老廃物の排出、美肌効果なども期待できるといわれています。また、海水中のミネラルバランスは、母親の体内で胎児を育む羊水とほぼ同じであるといわれており、海水浴などでそれらを取り込むことは、人にとって最も自然に体調を整えることができるともいえます。

水質調査
 1970年代には高度経済成長による環境汚染(海水を含む)が深刻化し、国による水質基準が定められました。環境省では毎年4月上旬〜6月上旬にかけて、地方自治体が実施した全国の「水浴場(開設前)の水質調査結果」を取りまとめ、公表しています。

 調査対象項目はふん便性大腸菌群数、油膜の有無、化学的酸素要求量(COD)、透明度で、それぞれに判定基準が設けられており、その検査結果から「適(水質AA・水質A)」、「可(水質B・水質C)」、「不適」の5つにランクづけされています。

 福岡市では東区の休暇村、勝馬、志賀島と西区の大原、能古の5カ所が調査対象となり、海水浴シーズン前とシーズン中の2回、それぞれ午前と午後に実施しています。昨年の調査結果はシーズン前、シーズン中ともに「水質AA」〜「水質B」の範囲内でした。また、福島第一原発の事故以来、放射性物質の調査も実施されており、こちらも問題ありませんでした。

 シーズン前の調査結果については、6月中旬〜7月上旬に公表される予定ですので、海水浴に出掛ける前に自治体のホームページで確認してみてはいかがでしょうか。

 楽しいはずの海水浴ですが、毎年多くの水難事故が起こっており、その半数が死亡事故になっています。体調不良時や飲酒をしながら泳がない、遊泳禁止区域には入らないなど、ルールを守って安全に海水浴を楽しみましょう。

水浴場水質判定規準 
区分 ふん便性大腸菌群数 COD(mg/L) 油膜 透明度
水質AA 不検出 (検出下限2個/100mL) 2 mg/L以下 油膜が認められない 全透 (水深1m以上)
水質A 100 個/100mL 以下 2 mg/L以下 油膜が認められない 全透 (水深1m以上)
水質B 400 個/100mL 以下 5 mg/L以下 常時は油膜が認められない 水深1m未満 〜50cm以上
水質C 1000 個/100mL 以下 8 mg/L以下 常時は油膜が認められない 水深1m未満 〜50cm以上
不適 1000個/100mLを 超えるもの 8 mg/L超 常時油膜が認められる 50cm未満※
・判定は、同一水浴場に関して得た測定値の平均による。
・「不検出」とは、平均値が検出下限未満のことをいう。
・CODの測定は日本工業規格KO102の17に定める方法(酸性法)による。
・透明度(※の部分)に関して、砂の巻き上げによる原因は評価の対象外とすることができる。

平成27年度 福岡市海水浴場水質調査結果(調査月日:7/28、8/3)
海水浴場 ふん便性大腸菌群数
(個/100mL)
COD
(mg/L)
油膜 透明度
(m)
O-157 判定
休暇村 <2

1.6

なし >1 不検出 水質AA
勝馬 7 1.8 水質A
志賀島 13 2.1 水質B

大原

20 3.3 水質B
能古 38 2.0 水質A

福岡市水質調査場所

 



こらぼ2016年夏号より抜粋