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クリプトスポリジウムについて

 クリプトスポリジウムとは、動物の小腸に寄生する原虫の一種です。

 近年、欧米でクリプトスポリジウム原虫に汚染された水道水による集団感染事故が頻発し、1993年米国のミルウォーキーでは403,000人が発症し、400人が死亡するという未曾有の集団感染が起こりました。日本でも平成8年6月に埼玉県の越生町で、クリプトスポリジウム原虫に汚染された水道水が原因で9,000人の町民が集団感染しました。

 感染の原因は水道水源よりも上流に、し尿を処理する施設や家畜糞尿の処理施設などの排水の放流口があり、水道原水にクリプトスポリジウムが混入したのではないかといわれています。また、クリプトスポリジウムは強い感染力を持ち、米国でのヒトへの感染実験では130個程度の経口摂取で半数が感染すると計算され、株によって毒性に差があることが示されており、10個未満の摂取で発症するとの報告もあります。

 症状としては、下痢(主に水様下痢)、腹痛、倦怠感、食欲低下、悪心などで、軽度の発熱を伴う場合もあります。しかし、特別な治療法はなく、下痢に伴う脱水症状に対し、十分な水分補給を行うことで1週間以内に免疫機能が働いて自然に治癒します。

 また、クリプトスポリジウム原虫は塩素消毒では全く効果がないため、水道水源の浄水場の対策として、急速ろ過、緩速ろ過、膜ろ過(0.5μm)の方法で除去を行ってます。

 水道の管理者は、水道水源の原水の濁度の監視や水質検査、クリプトスポリジウムの定期的な検査などを行い、安全の確保に努めていますが、管理されてない井戸水に関しては各自の注意が必要となってきます。



こらぼ2009年春号より抜粋