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抗生物質は血中濃度をある程度以上高くしても効果は変わらず、治療の標的となる細菌のMIC(最小発育阻止濃度)以上の濃度をどれくらい長く保てたかが効果に影響します。
一般に最も多く使用されるペニシリン系、セフェム系などのβラクタム剤は細菌特有の細胞壁の合成を阻害し、ヒトにはほとんど毒性がないという特徴をもっています。そのため安全域が広く、血中濃度の増加に比例して副作用が増加することがほとんどないことから、血中濃度測定を行いません。
しかし、バンコマイシンやアミノ配糖体(ゲンタマイシン、アルベカシン、トブラマイシン、アミカシンなど)を使用するときには血中濃度を測定します。これらの薬剤は血中濃度の高い状態(中毒域)が続くと腎障害や聴覚障害などの重篤な副作用をまねく可能性があります。逆に使用量が少なすぎると効果が得られず、血中濃度が低い状態(無効域)が続くとバンコマイシン耐性腸球菌などの耐性菌を出現させる可能性があります。そこで、副作用や耐性菌の出現を避けるために血中濃度を測定し、投与量や投与間隔を調整します。
採血のタイミングは薬剤によって異なります。薬物血中濃度測定では多くの場合、定常状態でのトラフ値を基本とします。これらの抗生物質ではトラフ値とピーク値の2点でモニタリングします。この場合、ピーク値が中毒域に達していれば投与量を減らし、無効域では増量します。トラフ値が安全域を超えていれば投与間隔を延長するか投与量を減量します。1点で測定する場合はトラフ値の測定を優先します。
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※ |
トラフ値:定常状態における薬物の次回投与直前に測定された最低血中濃度 |
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ピーク値:薬物の単回/連続投与後の最高血中濃度 |
| 表.採血のタイミング |
| 抗生物質名 |
採血時期 |
ピーク 注) |
トラフ |
| バンコマイシン |
投与開始3〜4日め |
点滴終了後1〜2時間 |
次回投与直前 |
| ゲンタマイシン |
投与開始2〜4日め |
筋注:投与後30分〜1時間
点滴静注:終了直後 |
次回投与直前 |
| トブラマイシン |
| アミカシン |
| アルベカシン |
投与開始3日め |
筋注:投与後30分
点滴静注:終了直後 |
次回投与直前 |
| テイコプラニン |
投与開始4日め |
点滴終了後1〜2時間 |
次回投与直前 |
| 注)残留薬物の混入を防ぐため、注入部位の反対の腕から採血します。 |
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〔参考〕
TDMポケットガイド、薬局新聞社、1998
最新臨床検査のABC、日本医師会、2008 |
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