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質問
 PIVKA-IIの肝細胞癌以外で上昇する要因は?

回答
 PIVKA-II(protein induced by vitamin K absence or antagonist-II)は肝で合成される凝固活性をもたない異常プロトロンビンのことで、肝細胞癌患者で高値を示すために腫瘍マーカーとして広く用いられています。しかし、肝細胞癌以外の疾患、病態においてもPIVKA-IIが高値を示すことがあり、注意が必要です。
 
 プロトロンビンの合成には補酵素としてビタミンKが必要であることから、ビタミンK欠乏や拮抗作用によってPIVKA-IIは産生されます。
 
 経口抗凝固薬のワーファリンはビタミンKの代謝に必要な酵素を阻害して活性を持たない凝固因子を増加させることにより血栓症を防ぐ働きをします。したがってワーファリン投与患者ではPIVKA-IIが異常高値を示します。
 
 同様に、肝内胆汁うっ滞、一部のセファム系抗生物質や抗結核薬投与、長期間の経静脈栄養などでビタミンKの吸収阻害・産生低下を原因としてPIVKA-IIの上昇が起こります。
 
 また、アルコール性肝障害でも上昇が認められることがあり、特にアルコール性肝硬変患者の肝癌スクリーニングに使用する際には注意が必要です。
 
 逆に、ビタミンK製剤投与中の肝細胞癌患者ではPIVKA-IIが低値となる可能性があります。
  
 ところで、PIVKA-IIは肝細胞癌の代表的な腫瘍マーカーであるα-フェトプロテイン(AFP)と相関せず、AFP低値ないし陰性例の30%前後で上昇が認められるため、肝細胞癌の早期発見を含めた慢性肝疾患の経過観察、肝細胞癌の経過観察や治療効果判定ではAFPとPIVKA-IIの同時測定が推奨されます。
 
〔参考〕
日本肝臓学会編 慢性肝炎の治療ガイド 2008
藤山重俊、他:肝胆膵 18(4)、1989