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質問
虫体鑑別をするための寄生虫の提出方法を教えてください。

 寄生虫は人と媒介生物との接触や侵入、食物摂取などにより、体内のあらゆる臓器や部位に寄生します。
 
 寄生虫症の直接的な検査法は、寄生虫そのものを肉眼や顕微鏡で見つける形態学的方法、寄生虫抗原の検出、そして寄生虫遺伝子の検出があります。その他に間接的に抗体検査法があります。
 
 質問内容は、「虫体鑑別」ですので、虫体のサイズにもよりますが、肉眼もしくは顕微鏡を使用して特徴のある部位を確認することになります。その形態学的確認をする際には、採取後の乾燥などによる虫体破損が鑑別の最大の障害となりますので、乾燥を防ぐことが大切になります。何らかの虫体と思われるものが採取された場合は、虫体(対象物体)のサイズにあった密閉容器に、10%ホルマリンか70%エタノールを入れ、疑われる虫体を入れてください。肉眼的に判別が不可能で遺伝子検査まで行う場合は、10%ホルマリン液での提出は時間経過によりDNA破壊が起こりますので注意が必要です。また、寄生虫の鑑別や検査には下記のような患者状況や情報が重要になってきます。
 
・熱帯から亜熱帯への渡航歴やそれらの国の出身者
・下痢腹痛といった腹部症状が2週間以上続いている人
・原因不明の咳、肺炎、胸膜炎などの所見が慢性的にあり、好酸球増多や肺野の異常陰影が移動したりする場合
・肝臓や皮下組織などに腫瘍がある場合で肺と同様の症状がある人
 
 疑われる虫体を鑑別する際は、どこで罹患した可能性があるのか、どこの部位で発見採取された虫体なのかなど大変重要になりますので、提出される際は詳しい状況の記入をお願いします。
 

 
〈参考〉
ラジオNIKKEI 2018年3月28日放送「寄生虫症の検査と診断」