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質問
血液検査で輸液混入疑いとはどういうことですか?

 生化学検査や血液検査をしている際に、極端な値に遭遇し驚くことがあります。もちろんその値が病態を反映していて緊急処置を要する場合もありますが、採血やその後の検体保存状況などに原因がある場合もあります。測定値が前回と大きく乖離している、臨床症状と合わない、複数の項目で異常高値や異常低値がみられるなどの場合には、輸液混入の可能性を考えます。
 
 輸液の目的は水や電解質、栄養の補給の他にも血管の確保や疾患の治療などさまざまで、その目的に応じて使用する輸液が異なるため、検査結果に与える影響も変わってきます。例えば生理食塩水(生食)が混入した場合、生食に含まれているNa(ナトリウム)とCl(クロール)が高値となります。また、糖質や電解質を含む輸液が混入すると含まれた成分に由来し、K(カリウム)やGlu(グルコース)が異常高値となります。さらに混入した輸液により血液が薄くなるため、TP(総蛋白)やAlb(アルブミン)などの生化学成分や血算は全体的に低値傾向を示します。
 
 採血時の輸液混入の多くは、輸液と同側の腕からの採血で起こります。JCCLS(日本臨床検査標準協議会)の「標準採血法ガイドラインGP4-A3」では、採血を避けるべき部位の1つとして「輸液が行われている部位の中枢側の血管」との記載があります。輸液の混入を避けるには、輸液と反対側の腕からの採血や輸液後しばらく時間を置いてからの採血などが有効です。ただし、ガイドラインが示しているのはあくまでも基本的な採血手技であるため、基本的手技で対応困難な場合には採血不備のリスクが低く、効率的な採血方法で個別に対応していく必要があります。
 
〈参考〉
・臨床化学検査技術教本、(一社)日本臨床衛生検査技師会
・Medical Technology 2020 Vol.48 No.6