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質問
末梢血液検査で寒冷凝集(赤血球凝集)ありとは?

 寒冷凝集は、赤血球が集塊を形成する現象(赤血球凝集)のことで、寒冷凝集素の存在が原因となります。寒冷凝集素は、赤血球膜上の糖鎖抗原に対するIgMクラスの自己抗体で、低温下では強い活性を示し、補体とともに赤血球に結合することで赤血球が凝集します。この反応は可逆的であるため、37℃に加温すると赤血球から離れていきます。
 
 多くの血球計数器では、凝集した赤血球は赤血球として測定されないため、赤血球数やヘマトクリット値は偽低値に、平均赤血球容積(MCV)や平均ヘモグロビン濃度(MCHC)は偽高値になります。とくにMCHCの異常高値で発見されることが多く、37℃で15分以上加温後すぐに再測定し、MCHCが低下すれば寒冷凝集の可能性が高くなります。その際、塗抹標本での凝集像確認が必要です。ただし、凝集が強い場合は加温をしても完全に凝集がなくならない場合があり、その際は採血後すぐに37℃で保存し速やかに測定する必要があります。
 
 寒冷凝集素の存在により、寒冷に暴露した際に赤血球凝集や血管内溶血をきたし、貧血などを呈する疾患を寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)といい、広義の自己免疫性溶血性貧血に分類されます。臨床症状は慢性溶血による貧血と、末梢循環障害による四肢末端のチアノーゼ、感覚障害、レイノー現象などがあり、慢性経過をとる特発性と基礎疾患に由来する続発性に分けられます。続発性の基礎疾患には、マイコプラズマやEBウイルスなどの感染症や悪性リンパ腫・慢性リンパ性白血病などがあります。
 
表1表2
赤血球凝集 40x MG染色

〈参考〉
・血液検査技術教本、(一社)日本臨床衛生検査技師会
・検査と技術 Vol.43 no10 2015年 増刊号