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質問
尿沈査で細菌が確認されたのに培養陰性となるのはなぜでしょうか?

 顕微鏡で細菌が確認されているのに、培養陰性となることはあります。白血球の有無も炎症所見の重要な情報となりますが、細菌の存在が確認できているのに培養が陰性となる原因としては、以下の3つがあげられます。
(1)細菌が死滅している、または発育能力が低下している
(2)嫌気性菌の場合
(3)使用した培地や培養条件では発育できない細菌である場合など
 
(1)は、すでに抗菌薬による治療を受けている場合や、検体の保管中に細菌が死滅した可能性が考えられます。グラム染色で確認すると抗菌薬の影響でフィラメント化した菌体が観察される場合があります。
(2)は、Bacteroidesなどの嫌気性菌の場合で、嫌気性培養の依頼が必要となります。女性であれば、生殖器の常在菌であるLactbacillusBifidobacterium等の嫌気性菌が尿に混入している場合があります。
(3)は、通常尿の培養には、グラム陰性桿菌用の培地と血液寒天培地を組み合わせて使用することが多いと思われますが、HaemophilusNeisseria gonorrhoeaeであればチョコレート寒天培地が必要となります。また、尿の培養条件は好気培養で1〜2日行いますが、細菌によっては炭酸ガス培養や、培養時間を長くしないと検出できない場合もあります。
 
 特殊な例では、結核菌等の抗酸菌の場合、抗酸菌培養が必要となります。顕微鏡による検査は、尿沈渣だけではなく、グラム染色を行って観察することで細菌の形状や染色性、推定される菌種など、より多くの情報が得られます。グラム染色の結果によって、他の培地追加や培養条件を変える方法などを行うこともあります。