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質問
 クロール(Cl)電解質が高値となる原因はありますか?

 生体内Clは、体重1kg当り30〜40mmolであり、その約90%が細胞外液に存在し、血清総陰イオンの70%を占めています。Naとともに細胞外液量と浸透圧を規定する重要な因子で、ほかの電解質との相互関係をもとに、水分平衡や浸透圧の調節、酸塩基平衡の維持などに関与しています。
 
 通常はNaClとして存在しているため、Naと同種の原因で変動し、同様の変化であれば、Na異常を示す疾患について検査します。血清Clの値だけが問題となることは少ないですが、陰イオンとしてClとHCO3両イオンの再吸収はNaの再吸収と等量であり、どちらかの陰イオンの変化はもう一方の陰イオンの変動を引き起こします。このため、Na+/Cl=1.4からかけ離れた数値を示す場合は酸塩基平衡障害が考えられ、血液ガス分析を行いHCO3を測定しanion gap;AG〔Na+−(Cl+HCO3)=12±4mmol〕を計算して、ClとAGの両値を考慮して判断する必要があります。
 
 測定上の変動要因としては、採血時のうっ血により、赤血球からHCO3が放出され、それと交換にClが細胞内へ移行するため血清Cl濃度は低下し、逆に全血放置では、血清Cl濃度は上昇します。
 
 また薬物の影響としては、イオン選択電極法での測定の場合、他のハロゲンの影響を受け、臭素(Br)やヨウ素(I)の濃度が高いと、偽性高Cl血症となることがあります。
 
※影響を受ける薬物
 ブロムワレリム尿素を含む催眠鎮痛剤、麻酔薬のハロセン、
 抗コリン薬の臭化ブチルスコポラミン、抹消性筋弛緩薬の臭化パンクロニウム、ヨード造影剤など。
 
表.Cl異常を示す疾患
高 値 呼吸性アルカローシス・尿細管性アシドーシス・ネフローゼ
低 値 呼吸性アシドーシス・嘔吐・原発性アルドステロン症
 
〈参考〉
・臨床検査法提要 改訂第34版から
・臨床検査データブック 2015-2016