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質問
 寄生虫検査の便の採取方法について教えてください。

 人体寄生虫としてさまざまな種が知られていますが、人を固有宿主とする蠕虫(ぜんちゅう)や原虫は消化管に寄生することが多いため、便の寄生虫検査を実施することにより虫卵やシスト(嚢子)を検出することができます。しかし、検査を実施するにあたり、便の採取方法が適切でなければ、検出率の低下や見落としなどが発生し、正確な検査結果が得られなくなります。
 
 まず、便の採取量ですが、寄生虫の種類により検査法には違いがあり、スクリーニングとして実施する直接塗抹法と集卵法を行うには、少なくとも2g以上(親指頭大)の便が必要となります。採取容器は保存液なしで、乾燥や汚染を防止するためネジ蓋のあるものを使用します。
 
 次に便の採取部位です。便は始め腸内で流動液状ですが、下降するに従い水分が吸収され徐々に固形便へと変化していきます。多くの寄生虫は流動便の状態の部位に寄生が認められるため、全体からまんべんなく採取されていれば便内部と表面をさほど区別する必要はありません。ただし、大腸のみに寄生する寄生虫が疑われる場合には、固形便の表面からの採取が有効なこともあります。また、寄生虫によってはイチゴゼリー状や脂肪便といった特徴的な便となることがあるので、その場合はその部位を採取します。
 
 便の寄生虫検査はできる限り早く実施するのが原則ですが、すぐに検査できない場合は4℃前後で冷蔵保管します。これは寄生虫の種類によっては卵内で幼虫形成が起きたり、孵化したりすることがあるからです。

※シスト(嚢子):生物体が堅固な膜を作り一時的に休暇状態となったもの。
 
 
〈参考〉
・一般検査技術教本
・検査と技術 Vol.45 No.3 2017年3月 増刊号