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質問
 採尿から時間がたった尿検体でも検査可能ですか?また、どんな影響がありますか?

 尿の放置によって生じる変化は一様ではなく、検体によってさまざまです。
 
 尿定性検査では、細菌の増殖によりpHはアルカリ化、亜硝酸塩は陽性化し、リン酸アンモニウム・マグネシウム結晶が析出するなど尿沈渣にも影響を与えます。尿素を分解しない大腸菌などでは糖の分解によりpHが低下することもあります。また、ウロビリノーゲンやビリルビンは光により分解され偽陰性を示す場合もあります。
 
 尿沈渣では、放置により赤血球や白血球、さらに円柱の崩壊が起こり、定性検査との乖離の原因となります。また、培養検査時にも菌数の過大評価をきたす可能性があります。
 
 尿検査は採尿後1時間以内の新鮮尿で行うことが重要ですが、やむを得ず保存する場合は可能な限り遮光し、冷暗所もしくは冷蔵(4℃)保存を行います。また、蓄尿や冷凍保存された尿では定性検査や沈渣検査は実施できません。
 
 日本臨床検査標準協議会(JCCLS)の「尿沈渣検査法2010」では、遅くとも4時間以内に検査を実施することが推奨されています。必要であれば再採取を実施することが重要です。
 
 
表.尿放置による尿一般検査への影響
項目 変化 要因
定性検査 ph
比重
蛋白
ブドウ糖
潜血反応
ウロビリノーゲン
ビリルビン
ケトン体
白血球反応
亜硝酸塩
アルカリ化
上昇
一定
陰性化
陽性化 → 陰性化
陰性化
陰性化
陰性化
一定 → 陰性化
陽性化 → 陰性化
細菌の尿素分解 → アンモニア発生
濃縮

細菌による消費
溶血亢進による陽性化の後、酵素活性失活
ウロビリン体へ変化
光による分解
揮発
長時間で酵素活性失活
細菌による亜硝酸塩還元増加、長時間で分解
沈査検査 細胞成分
円柱類
細菌・真菌
塩類
減少
減少
増加
増加
崩壊
崩壊
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参考
・日本臨床衛生検査技師会尿沈渣検査法編集委員会:尿沈渣検査法2010、日本臨床衛生検査技師会2011